「未経験から経理に転職したい。でも、面接で転職理由をなんて説明すればいいんだろう…」
「今の仕事と経理には何の接点もない。説得力のある志望動機が全く思いつかない」
「『なぜ経理なの?』という質問に、自信を持って答えられるようになりたい」

未経験の職種へ、それも専門性が高いとされる経理職への転職を決意したあなたにとって、「転職理由」は最大の壁として立ちはだかっているのではないでしょうか。経験者であれば過去の実績を語れますが、未経験者にはそれがありません。だからこそ、あなたの「熱意」と「ポテンシャル」を伝える転職理由が、合否を分ける極めて重要な要素になるのです。

経理の現場で15年以上、採用面接にも関わってきた私の経験から言えるのは、採用担当者は未経験者の転職理由から「その人の本気度」と「将来性」を見抜こうとしている、ということです。

本記事では、あなたの転職理由を「ただの作文」から「採用を勝ち取るための戦略的ツール」へと昇華させるための、具体的な方法を徹底的に解説します。職種別の例文5選はもちろん、採用担当者の視点、よくある失敗例まで、この一本であなたの悩みはすべて解決します。

この記事を読み、あなただけの「勝てる転職理由」を完成させましょう。

経理未経験者が転職理由としてアピールすべき強みや志望動機とは

まず理解すべきは、採用担当者が未経験のあなたに何を期待しているかです。彼らはあなたに「即戦力」を求めているわけではありません。では、何を見ているのか。それを知ることが、響く転職理由を作る第一歩です。

採用担当者はここを見ている 未経験者の3つの評価ポイント

経理経験がないあなたに対して、面接官は以下の3つのポイントを重点的にチェックしています。

  1. ポテンシャル(将来性):現時点でのスキルよりも、「この人は入社後に成長してくれそうか」という伸びしろを見ています。素直さ、学習意欲の高さ、論理的思考力がその判断基準となります。
  2. 人柄(カルチャーフィット):経理はチームで仕事を進める場面や、他部署との連携が欠かせません。既存の社員と協力し、組織にうまく溶け込める人柄かどうかは、非常に重要な要素です。
  3. 志望の本気度:「なぜ数ある仕事の中から、あえて経理を選んだのか」という問いに、自分自身の言葉で、納得感のある答えが出せるかを見ています。一時的な憧れや、安易な考えで応募していないか、その本気度を確かめようとしています。

これらのポイントを意識し、あなたの転職理由に盛り込んでいくことが重要です。

「なぜ経理なのか」を自分の言葉で語るための自己分析

説得力のある転職理由は、あなた自身の経験に基づいている必要があります。まずは、過去の経験を棚卸しし、「なぜ経理に興味を持ったのか」という原体験を見つけ出しましょう。

  • 営業職の経験から:「売上数字を追いかける中で、その数字が会社の利益にどう繋がるのか、会計の裏側にもっと深く関わりたいと感じた」
  • 販売職の経験から:「日々の売上管理や在庫管理を行う中で、数字を正確に扱うことの重要性と面白さに気づいた」 – 事務職の経験から:「請求書の発行や経費精算のサポートをする中で、より専門的な知識を身につけて、会社経営の根幹を支える仕事がしたいと考えるようになった」

このように、前職のどんな小さなきっかけでも構いません。その経験と経理の仕事を繋ぎ合わせることで、あなただけのオリジナルなストーリーが生まれます。

【例文5選】もう迷わない!職種別・未経験からの転職理由

ここでは、具体的な職種を想定した転職理由の例文を5つ紹介します。これをベースに、あなた自身の言葉でアレンジしてみてください。

【例文1:営業職から経理へ】
前職では食品メーカーの営業として、5年間新規顧客開拓に従事してまいりました。日々の営業活動で売上目標を追う中で、その数字が会社の利益にどう反映され、経営判断にどう活かされているのかという会計の仕組みに強い関心を持つようになりました。営業として培った「目標達成に向けた粘り強さ」と「他部署を巻き込むコミュニケーション能力」は、経理として正確な月次決算を遂行し、各部門と円滑に連携を図る上で必ず活かせると考えております。1年前に日商簿記2級を取得し、現在はFASS検定の学習も進めております。これからは会社の成長を内側から支える専門職として、貴社に貢献したく、志望いたしました。

【例文2:接客・販売職から経理へ】
アパレル店長として、店舗の売上・在庫・顧客データの管理に8年間携わってまいりました。数字の分析から顧客ニーズを読み解き、販売戦略を立てることにやりがいを感じており、この「数字を根拠に課題を解決する」という経験を、より専門的な形で会社の根幹を支える業務に活かしたいと考え、経理職を志望いたしました。店長として多様なスタッフをまとめてきた経験から、チームで協力して目標を達成することには自信があります。また、お客様からのクレーム対応で培った冷静な対応力は、プレッシャーのかかる決算期においても落ち着いて業務を遂行する上で役立つと考えております。簿記2級の知識を基礎とし、一日も早く実務を吸収し、貴社の正確な経理業務に貢献したいです。

【例文3:一般事務から経理へ】
現職では総務部の一般事務として、備品管理や電話応対の傍ら、経理担当者のサポートとして請求書発行や経費精算の一次チェックなどを3年間担当してまいりました。サポート業務を行う中で、断片的な知識ではなく、仕訳から決算までの一連の流れを体系的に理解し、専門性を身につけたいという思いが強くなりました。貴社を志望したのは、未経験者でもOJTを通じて着実に成長できる環境があると伺ったためです。事務職として培った「正確かつ迅速な事務処理能力」と「細やかな気配り」を活かし、まずは補助的な業務から着実にこなし、将来的には月次決算を一人で任せていただけるような人材に成長したいと考えております。

【例文4:ITエンジニアから経理へ】
プログラマーとして、業務システムの開発に6年間携わってきました。特に会計システムの開発プロジェクトに参加した際、簿記の知識を学び、数字が経営の言語であることを実感し、強い興味を抱きました。今後はシステムを作る側ではなく、会計知識とITスキルを掛け合わせ、ユーザーとして経理業務の効率化やDX推進に貢献したいと考えております。論理的思考力と問題解決能力には自信があり、新しい会計ソフトの導入やRPAを活用した業務改善などで、貴社に貢献できると確信しております。簿記2級に加え、基本情報技術者試験にも合格しております。このスキルを活かし、新しい視点から貴社の経理部門に貢献できるものと存じます。

【例文5:公務員から経理へ】
市役所の職員として、窓口業務や内部の事務処理に7年間従事してまいりました。公務員としての安定した環境には感謝しておりましたが、よりスピーディーな意思決定が行われる民間企業で、経営にダイレクトに貢献できる専門性を身につけたいという思いが強くなり、転職を決意いたしました。中でも、全ての企業活動の基盤となる経理職に魅力を感じています。法令や規則に基づき、正確に業務を遂行してきた経験は、コンプライアンスが重視される経理の仕事と親和性が高いと考えております。また、多様な住民の方と接してきた経験で培った丁寧な対応力も、社内外との調整業務で活かせると考えております。民間企業の会計実務は未経験ですが、一日も早くキャッチアップし、貴社の発展に貢献したいです。

経理の仕事内容と未経験からチャレンジする際の基礎知識

説得力のある転職理由を語るには、経理の仕事を正しく理解していることが大前提です。「イメージと違いました」とならないためにも、ここで基礎知識をしっかりと押さえておきましょう。

意外と広い経理の仕事範囲 日常業務から決算業務まで

経理の仕事は、大きく「日次業務」「月次業務」「年次業務」の3つに分かれます。

  • 日次業務:日々発生するお金の動きを記録・管理する仕事です。現金・預金の管理、伝票の起票・整理、経費精算などがこれにあたります。全ての業務の基礎となる、正確性が求められる仕事です。
  • 月次業務:1ヶ月ごとに行う業務で、会社の成績表(月次決算書)を作成することが主な目的です。売掛金の回収、買掛金の支払い、給与計算、月次試算表の作成などを行います。経営陣が次の打ち手を考えるための重要な情報となります。
  • 年次業務:1年の総まとめとなる業務です。年次決算書の作成、法人税などの税務申告、株主総会の準備、監査法人への対応など、業務は多岐にわたります。1年で最も忙しく、高度な専門知識が求められる時期です。

未経験者は、まず日次業務や月次業務のサポートからスタートするのが一般的です。

会社規模でこんなに違う 経理の役割

働く会社の規模によって、経理担当者の役割は大きく異なります。自分の志向に合った環境を選ぶことが、入社後のミスマッチを防ぐ鍵です。

  • 大手企業:業務が細分化・専門化されており、あなたは「売掛金担当」「固定資産担当」のように、特定の分野のスペシャリストとしてキャリアを積むことになります。安定した環境で、一つのことを深く掘り下げたい人に向いています。
  • 中小企業:少数精鋭で運営されているため、一人が担当する業務範囲が非常に広いです。日々の伝票処理から決算、税務申告、資金繰り、時には総務や労務まで任されることも。幅広い経験を短期間で積みたい人に向いています。 – ベンチャー企業:経理の仕組み自体がまだ整っていないことが多く、フローの構築から携わることができます。変化が多くカオスな状況を楽しめる、チャレンジ精神旺盛な人に向いています。

未経験者が最初にぶつかる3つの壁と心構え

未経験から経理に挑戦する際、多くの人がぶつかるであろう壁が3つあります。事前に知っておくことで、心の準備ができます。

  1. 専門用語の壁:「借方・貸方」から始まり、「減価償却」「引当金」など、日常では使わない専門用語のオンパレードです。最初は会話についていくだけでも大変かもしれません。
  2. 会計ソフトの壁:簿記の勉強は紙ベースで行いますが、実務はほぼ100%会計ソフトを使います。勘定奉行、弥生会計、freee、マネーフォワードなど、会社によってソフトは様々で、その操作に慣れるまで時間がかかります。
  3. 地道な作業の壁:経理の仕事は、華やかさとは無縁の地道な作業の繰り返しです。膨大な伝票のチェックやデータ入力など、コツコツとした作業が苦手な人には辛く感じるかもしれません。

これらの壁を乗り越えるには、「分からないことは素直に聞く謙虚さ」と「地道な努力を続けられる粘り強さ」が不可欠です。

未経験から経理職へ転職する際によくある失敗とその回避法

「せっかく転職したのに、こんなはずじゃなかった…」そんな後悔をしないために、未経験者が陥りがちな失敗パターンとその回避法を知っておきましょう。

失敗例1 資格取得がゴールになってしまう

「簿記2級を取ったから大丈夫」と安心してしまい、その先の学習や情報収集を怠ってしまうケースです。資格はあくまでスタートラインに立つための入場券に過ぎません。実務では、税制改正や新しい会計基準など、常に知識のアップデートが求められます。入社後も学び続ける姿勢を忘れないことが重要です。 【回避法】面接で「入社後、どのようにスキルアップしていきたいですか?」と聞かれた際に、具体的なプラン(例:FASS検定の取得、実務と並行して税法の学習など)を語れるように準備しておきましょう。

失敗例2 理想と現実のギャップで早期離職

「専門職でかっこいい」「会社経営の中枢」といった漠然としたイメージだけで転職し、入社後に地道な作業の多さや人間関係に悩み、辞めてしまうケースです。 【回避法】企業研究を徹底的に行いましょう。求人票だけでなく、企業の口コミサイトなども参考に、職場のリアルな雰囲気や残業時間などを把握します。面接では、「未経験の私が入社した場合、どのような業務から担当することになりますか?」といった逆質問をすることで、入社後の働き方を具体的にイメージできます。

失敗例3 応募先の企業選びを間違える

教育体制が整っていない企業や、そもそも未経験者を受け入れる文化のない企業に応募し続けてしまい、時間だけが過ぎていくケースです。 【回避法】求人票の「応募資格」欄を注意深く見ましょう。「経理実務経験3年以上」などと明記されている求人は、基本的に未経験者は対象外です。「未経験者歓迎」「ポテンシャル採用」といったキーワードがある求人や、会計事務所、中小企業など、未経験からでも挑戦しやすいフィールドにターゲットを絞ることが成功への近道です。

経理未経験者が転職を考えるタイミングと判断ポイント

「いつ転職活動を始めるべきか」「今の会社を辞めるべきか」こうした悩みを抱える方のために、最適なタイミングと判断基準を解説します。

「手に職をつけたい」と感じたらそれがサイン

今の仕事に対して、「このままでいいのだろうか」「将来、今のスキルだけで食べていけるだろうか」といった漠然とした不安を感じた時が、キャリアチェンジを考える最初のサインです。経理は専門性が高く、一度スキルを身につければ、年齢を重ねても、勤務地が変わっても、長く働き続けることができる「潰しの効く」仕事です。その安定性と専門性は、あなたの将来の不安を解消する大きな力になります。

年齢的なリミットは存在する? 30代前半までが有利な理由

正直に言うと、未経験からの転職には年齢的なリミットが存在します。一般的に、ポテンシャル採用の対象となるのは30代前半までと言われることが多いです。35歳を超えると、企業側は即戦力となる実務経験を求める傾向が強くなるため、未経験からの転職のハードルは格段に上がります。もちろん不可能ではありませんが、もしあなたが30代前半までなら、有利な状況にあることは間違いありません。思い立ったが吉日、早めに行動を開始することをお勧めします。

在職中に準備すべきことリスト

転職を決意したら、いきなり会社を辞めるのではなく、在職中に計画的に準備を進めましょう。

  1. 日商簿記2級の取得:最優先事項です。まずは学習計画を立て、試験合格を目指しましょう。
  2. 自己分析と経験の棚卸し:本記事を参考に、転職理由の核となるストーリーを考えます。
  3. 情報収集:転職サイトやエージェントに登録し、どんな求人があるのか、市場の動向を把握します。
  4. 応募書類の作成:履歴書・職務経歴書のドラフトを作成し、転職エージェントなどに添削してもらいましょう。

これらの準備を在職中に進めておくことで、スムーズかつ有利に転職活動を進めることができます。

経理未経験者が転職活動で直面しやすい悩みとQ&A

最後に、未経験者が抱える具体的な悩みについて、Q&A形式で回答します。

経理に興味を持った理由がうまく説明できません

A. 無理にドラマチックな理由を考える必要はありません。前職での小さな経験から紐づけてみましょう。「売上報告書を作っていて、数字が合うと達成感があった」「Excelでデータ集計をするのが好きだった」「会社の経費の使い方に疑問を持ったのがきっかけ」など、身近なエピソードで十分です。その小さな興味から、「もっと専門的に知りたい」という学習意欲に繋げるのがポイントです。

正直経理への強い志望動機がありません

A. 無理に「憧れていました」と言う必要はありません。その場合は、「適性」と「将来性」の観点から語りましょう。「私の強みである〇〇(例:コツコツ努力できる、細かい作業が得意)が、経理の仕事に最も活かせると考えました。また、専門性を身につけ、長期的な視点で会社に貢献できるキャリアを築きたいと考えています」というロジックであれば、嘘がなく、堅実な人柄が伝わります。

すぐに使える経理の転職理由・志望動機の例文を教えてください

A. 本記事の【例文5選】を参考にしてください。重要なのは、例文を丸写しするのではなく、「なぜそう思ったのか」というあなた自身の具体的なエピソードを盛り込むことです。例えば「コミュニケーション能力を活かしたい」と書くなら、「営業として〇〇という難しい交渉をまとめた経験」といった具体例を加えることで、一気に説得力が増します。

新卒の就活と未経験の中途採用では志望動機はどう違いますか

A. 新卒は「純粋なポテンシャル」が評価の中心ですが、中途採用の未経験者は「社会人経験で培ったスキル+ポテンシャル」が評価されます。新卒と同じように「学びたいです」という姿勢だけでは不十分です。「前職の〇〇という経験を、経理の仕事にこう活かせます」という、社会人経験を強みとしてアピールする視点が不可欠です。

パートの経理事務に応募します 未経験でも大丈夫でしょうか

A. はい、パートは未経験者にとって門戸が広い働き方です。志望動機では、フルタイムで働けない理由(家庭の事情など)を正直に伝えつつ、「限られた時間の中でも、責任感を持って貢献したい」「長く安定して働きたい」という意欲を伝えましょう。「子育てで培ったマルチタスク能力」や「PTAの会計を担当した経験」なども、アピール材料になります。

接客業から経理事務を目指します どんな志望動機が良いですか

A. 接客業の経験は、経理でも大いに活かせます。「売上管理で数字に強くなった」「クレーム対応で忍耐力と冷静な対応力が身についた」「幅広い年代のお客様と接してコミュニケーション能力が磨かれた」といった点をアピールしましょう。裏方として人を支える仕事に魅力を感じた、という転換の理由を添えると、より説得力が増します。

(新卒向け)未経験ですが経理を志望する理由はどう書けば良いですか

A. 新卒の場合、実務経験がないのは当然です。そのため、学業やアルバE.イト経験から、経理への適性を示しましょう。「大学のゼミで統計分析に没頭し、数字の裏側にある意味を考える面白さを知った」「アルバイト先でレジ締めを任され、毎日お金を正確に合わせることに責任とやりがいを感じた」など、具体的なエピソードを交え、誠実さや学習意欲の高さをアピールすることが重要です。

転職理由は、あなたという人間を企業にプレゼンテーションするための最初の、そして最も重要なステップです。この記事を武器に、自信を持って、新たなキャリアへの扉を開いてください。